「雲雀くんって、苺が好きだよね?」
黙っていても分かるんだ
「は? 何勝手なこと言ってるの」
訊くと下から 少し機嫌が悪そうな声が返ってきた。
此処は応接室で、今雲雀くんは、私の膝を勝手に枕代わりにして書類(名簿、かもしれない)に目を通している。
(ちょっと重たいけどこの重さが幸せに感じる、だなんて言おうものなら凄い厭らしい目で笑われちゃうに違いないから勿論そんな事は言わない
)
「え、だってこの間の私のお弁当に入ってた苺、羨ましそうに見てなかった?」
「見てないよ。 何言ってるの」
軽く睨まれた。(ちょ、ちょっとそれって彼女に向ける目つきじゃない気がするんですけど・・)
「そっかー。 じゃあさ、プチトマトは好き?」
「別に好きでもないし ちなみに見てもいない」
「もう、つれないなぁ。 まだ何も言ってないじゃない」
「次の言葉が簡単に予測出来たから、先に答えただけ」
名簿らしきものに視線をよこしたままそう言われた。
たまにチェックを入れたり何処かを指で指したまま動きが一時停止したりしてる。
(きっと彼は次に誰を咬み殺そうか考えてるんだ。 二人でいるこの時間くらいそんなこわいことを考えなくてもいいのに)
そして次は否定されないような質問を考えてみる。
手持ち無沙汰だったので、何となく雲雀くんの髪を手櫛で梳いてみたら凄いサラサラで吃驚した。(うわ何これ。 何か特別なお手入れでもしてるの雲雀くん!?)
「うーん。 じゃあさ、・・・私のことは、好きー?」
必死に考えてとりあえず出した答えが、これ。
・・という辺りが、やはり私はおばかさんというか何と言うのか。とりあえず自分は こういう妙に頭を捻ることは苦手なんだと改めて思った(というかこれで『別に』とか言われたらどうしようとか今更考えた)(もし、そんなこと言われたらへこむ、なあ)
雲雀くんは上半身を起こしたあと、ちろりと私のほうへ視線をよこして
「さあ?」 とだけ言った。
(え、あれ今ちょっと鼻で笑わなかった!? ねえちょっとどういうことですか)
「・・・好きじゃないの?」
少し声が上ずる。 やばい、落ち込みそうかも。
ていうかそこはせめてもう少し甘い言葉が欲しかった(いや雲雀くんの口から『好き』とか『愛してる』とか出てきたら怖いけど。怖いけど!)
気付くと彼はもう帰りの準備をしていた。 窓から薄く蒼いいろとオレンジのいろが混じったような光がさしこんでいる。
「さあそろそろ外も暗くなってきたし、帰ろうか」
「話を逸らさないでー!」
「・・なあに、。 もしかして僕に『愛してる』とでも言ってほしいの?」
にやりと、厭らしい笑顔を浮かべてこちらにくるりと振り返った彼。
「う、 あ、まぁ・・・」
ここで『言って欲しい』といってしまえば、彼は望み通りの言葉をくれるのだろうか。
なんて、そんなことを考えていたら彼は喉の奥で堪えたように笑い出した。(きっと私の頬が一気に紅く染まった所為だろう。 もう、恥ずかしい!)
「って本当、分かり易いよね。 そうならそうと最初から言えばいいのに」
「う、うるさいなっ・・・ ?」
何かが唇に触れる感覚が、した。
そう気付いたときには彼の顔は既に離れていて、胸が炎をあげていくような感覚がする。
「こうしたいなら、最初から言えばいいのに」
綺麗な顔で笑って、雲雀くんはそう言った。
「『愛してる』」
「・・・・・ぅ、あ、そ、ひ」
言葉が先程よりも上手く出ない。(ど、どうしよう心臓爆発しそうだよ!)
「日本語になってないよ、」
くすり、と彼は薄く笑った。
「な、なななな なんで・・・!?(ぎゃああ)」
「さあ、ね? さ、そろそろ帰ろう。早く帰らないと家族に心配されるよ」
雲雀くんは私の手を引っ張って出口へと向かっていく。
「・・・また、話逸らした」
でも、それを突き止めるのは止めにした。
(だって後ろからでも見える彼の紅く染まった耳と、少し汗ばんだ手について気付いてしまったから)
有難う、雲雀くん。 大好きだよー。 そう呟いてみたら(一応聴こえないよう音量を落としたつもりなのに)聞こえていたのか握られた手の力が強くなってちょっと痛かった。
(やっぱり、私は雲雀くん以外考えられません! なんてことも、本人にはまだ恥ずかしくて言えません)
── 後書きという名の懺悔(というか遺書) ──
初リボーン。
御免なさい、最後無理矢理終わらせました。そしてよく分からん話に。というかベタ過ぎですねすみません。
そして予想以上に雲雀さんが気持ち悪くなってしまってほんと申し訳ない限りです。
も、もうあの子(友人Y)のせいだ・・・!(責任転嫁